「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

心の不調時は勇気を出して外へ

今週のお題「体調が悪いときの過ごし方」

 咳や鼻水、発熱等明らかに身体の不調の場合は薬を飲むとか暖かくして早く寝るとか対処のしようがあるが、心が疲れている事が原因の場合は自分の力だけで改善出来ない時がある。出かける事自体が億劫になりがちだが、勇気を出して出かけてみると、かえってスッキリ体調改善に繋がるものだと最近体験した。

 コロナによる自粛生活が明けて半年、「私ってこんなに友達いなかった?」と思い悩む程落ち込んでいた。かと言って自分から誰かに連絡するのも気後れしていた。

 8月のある日、元の職場で一緒だった友達からLINEが来た。

「元気?久しぶり。市内でウオーキングの行事があるけど一緒にいかない? こういうの好きだったよね?」という誘いで、私は飛び上がる程嬉しかった。以来定期的に連絡を取り合って出かけている。

 11月になりちょっと離れた市のウオーキングに参加したとき、彼女は

「職場の何人かで食事行こうって話あるけど、行かない?」と誘ってくれたのだが、私が行ってもいいの? という気持ちだった。話を貰ってからその日その時間にそこへ行くまで何となく緊張していた。

 聞けば、元介護職Aさんと元歯科衛生士Bさんが偶然出会って立ち話するうち食事に行こうという話になった。で、元介護職Aさんが同じデイサービスで現リーダーをしている彼女を誘い、彼女が私を誘った。

 元歯科衛生士Bさんが元管理栄養士Cさんを誘い、Cさんが現ケアマネDさんと元生活相談員Eさんを誘うとシングルマザーのEさんの小学低学年の息子さんと顔見知りであるデイサービスの現看護師Fさんの息子さんが遊んで待っててくれることになった縁で、Fさんが参加。

 現職2人、元職5人の合わせて7人が顔を揃えた。

 こんな事が実現するからすごい。

 日曜日の18時半に店の駐車場で会うと、

「わー、久しぶり!」「元気?」から始まり、「今何してる?」に続く。

 半個室に案内されて注文を済ませると「自己紹介」が始まり、順番に退職後から現在迄を興味津々に聞く。現職の関心事は「どうやって辞めたか。ボスに何と言ったのか。そして何と言われたのか」一筋縄ではいかないボスの暴言語録が各々の口から披露された。そして現在その暴言に振り回されている現職達は、辞めた元職達の生き生きした表情に心が揺らぐようだった。

 私は斎場に勤めている事を言うのを少しためらった。施設でケアマネをしていた頃、施設を退居して別の施設や病院へ移った利用者のその後が気になりながらも、理由が無ければ尋ねる事も出来ず知るすべは無かった。自分が関わった大切な利用者をきちんとお見送りする事を最初の目標にしたと話した。世間には偏見があるが私がそこに勤めている事で付き合うのをやめようと思う? と問うと皆が首を横に振った。嬉しかった。逆に「その心意気あっぱれ」「向いてる」とも言われて、自分が気にするほど私達の世代では偏見は無いのかもしれないと思った。

 元介護職Aさんが納棺師を目指して退職した経緯を皆が知っていた事や、施設で入居者を看取る事があるのも、そのハードルを下げた要因だろう。

 なのにその元介護職Aさんは都合が付かずにこの食事会を欠席している。

 斎場で以前親族の収骨をしたと話す歯科衛生士Bさんが

「骨が綺っ麗に残ってた。あれって人によるんてね。説明もすごく自信を持って丁寧にしてくれて、すごいと思った」と話すのを皆が真剣に聞いているのを見て、口コミってこういう風に広がっていくんだと恐ろしく感じた。

 以来私は火葬は綺麗な形でお骨を残す事や自信を持って丁寧に説明をする事をそれまで以上に意識している。

 イタリアンレストランのコース料理5000円は皆で「自分へのご褒美」と申し合わせて記念のご馳走となった。

 18時半に始まった食事会は22時の閉店間際までおしゃべりが途切れる事なく、次回は元介護職Aさんを含めAさんの子供さんの受験が終わる春に予定する。

 すごくスッキリしてすごいデトックス効果を感じている。

 女だわ、私。と思った。