「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

介護に出会った頃にタイムスリップ

今週のお題「雨の日の過ごし方」

 今年は梅雨入りが早かった。照ったり曇ったり、時々降ったりならいいけど、そんなにひどく降らなくても、そんなに強く吹かなくてもと思うほど、雨風が強い。

 梅雨でなくても、コロナだし、術後だし、籠ってる。

 で、家の中の片付けは続いている。

 懐かしいものが出てくると、つい手に取って読み返し、時間を忘れてしまう。

 今日はパソコン台の足元に置きっぱなしだった段ボールを片付けた。

 その箱には職業訓練に通っていた頃のテキストやプリントが詰めてあった。

 

 平成23年の資料、つまり10年前。

「訓練・生活支援給付受給資格者証」に証明写真が貼ってある。10年前の私はこんな顔だった・・・戻りたい。息子がこの写真を見て「(今は)やつれた」と言った。そして息子はもう一言「このくだりをブログに書くんか」とも。はい。書きます。この後私は10年苦労して今の姿になったって事でしょ。

 その頃ハローワークに通っていた。壁に貼ってあった「職業訓練介護職員基礎研修受講者募集」の張り紙が目に付いた。私もあの訓練を受講出来るかとハローワークの窓口で尋ねると、その職員は言った。

「出来ますよ。介護は専門職。これからの時代、必ず必要とされる職業だからこれがあるんです」

 職業訓練の中でも、生活支援金を受けながら通う基金訓練だった。

 6か月のカリキュラムのうち、5か月は座学、最後の1か月は実習だった。

 介護実習に行くと毎日実習記録を紙媒体で提出しなくてはならない。その日の実習目標と課題、実習内容、本人の振り返り、指導者コメントがA4用紙1枚になっている。自分が書いた振り返りの文章と、指導者コメントを読み返すうち、頭の中はタイムスリップしていた。

 初めて介護の現場を経験したのはグループホーム。その時の緊張と、必死だった気持ちが蘇る。とにかく自分から声をかける事が苦手だった。その後デイサービス、最後は訪問介護だったのだが、各所で最終日に職員さんに「私はどんな施設か仕事に向いているだろうか」と尋ねるとどちらでも「ケアマネ」という答えが返ってきて驚いた。まだ介護の仕事をする前から?「何となく雰囲気が」と言われた。

 6か月間の研修でいつ頃書いたものか不明だが「介護について」という題で書いた文が残っている。

「・・・他者の生活に入り込み、その生き様や人生そのものを共有、又は背負う仕事と考える。一人の人とじっくり向き合い、全てを受け入れるのは不安だが、喜んで貰えることが自分の喜びとなって続けたい。自信を持って人に会い、臨機応変に対応出来る介護者を目標とする。そのために確かな知識と技術、考え方を持てるよう、勉強と経験を積み上げていきたい」・・これがいわゆる、初心。今もその考えは変わらない気がする。

 あれから10年。介護に出会って10年になる。

 就業3年で介護福祉士資格を取得し、5年でケアマネ資格を取得したが、この資格に恥じない仕事が出来ているかと言えば、今の自分はまだ途上だ。およそ隔年で何かしらの研修を受けて学ぶ機会を得ており、今年はケアマネ更新研修を受講する。

 初心に戻り、確かな知識と技術を身に着け、自信を持って他者と接する事を再度目標に掲げる。それに加え、ケアマネとなった今は倫理面でも資質を求められる。

 段ボールの中には、10年前の半年間の研修で一緒だった人がくれた手紙があった。

 初めての介護実習で上手くいかずに凹んでいた私にくれた手紙だった。今読み返しても励まされる。

 やっぱり、手紙っていいなと思う。捨てられない。

 こんな風に一人で過ごす雨の日も、いい。