「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

もう辞めようと思った出来事

お題「わたしの仕事場」

もう、辞めよう! ようやく踏ん切りがついた。

 これまで何度も沈んでは浮き上がりアップアップしながら仕事を続けてきた。

 それが、もう、こんな職場どうでもいい! とさえ思える出来事が起きた。

 土曜日の朝、少し早めに支度して出勤途中、電話が鳴った。

「今どこですか? 早く来れますか? 救急搬送です」

 大急ぎで出勤すると、入居者の居室に既に救急隊が到着し、ベッドからストレッチャーに移し替えられるところだった。

 夜勤明けの管理者が入居者と一緒に救急車に乗り込み、公休日だったホーム長は搬送先病院へ駆けつけ、私は施設に居て主治医に搬送先病院への情報提供書の依頼と、入居者家族への連絡をした。入院になるとの事で、介護サマリーを作成し、内服薬や義歯等を準備して病棟へ届けた。家族に病棟を尋ねた際に新聞の朝刊の定期購読を止める手続きするよう伝えたのだが、この新聞を巡って事件が起きた。この入居者の朝刊が毎朝施設の朝刊と一緒に施設の郵便受けに届いているので、施設の事務が頼んでいると思い、どこに連絡したらいいのか手がかりが欲しくて事務所の中を探したのだが見つけられない。知っているのはお局のみ。施設で契約する時にサービスして欲しいと言ってお局が販売店に交渉しているのを見ていた。困った。今日は土曜日。事務方のお局は公休日。これまで週末やお局が休んでいる日に連絡した事は無い。週明けを待つか、出来る所までして週明けにお局が出勤してから確認を取るようにしていた。

 だが今回は、朝刊を止めないと入居者が払い続ける事になる。悩んで、電話した。

「お休みの所すみません。どうしても困っていて教えて頂きたい事がありまして・・・」そして最後に「本当にお休みなのにすみませんでした。失礼します」と散々言い倒して電話を切った。結果、入居者家族に直接販売店に連絡して貰えばいいという事が分かった。お局は「そうなん。色々大変じゃね・・」と言った。

 バタバタしている間、他入居者の通常の介護業務は他の職員が頑張ってくれた。19時の退勤時間を過ぎても終わらない。翌日の入居者全員の内服薬を服薬ボードに貼り付けて、ぐったり疲れて帰り、遅い夕食を取っている時、携帯のLINEが鳴った。

 管理者からだった。

「今日の薬のセットで貼ってないのがあったからインシデントお願いします」

 何の事? 何で管理者? あなた夜勤明けだったよね?

 尋ねると「今日の夜勤者から連絡が来て・・」と苦しい言い訳LINE。

 最近この2人は近づき過ぎて、職場の中で問題になっている。管理者のビッグマウスを笠に着て新人職員の態度が大きい。勤務中に菓子を食べる、入居者の布団に入って寝る等、目に余るが管理者がバックに付いているのが分かっているので誰も何も言わない。

「分かりました」と返信して数日後管理者が出勤した際に提出した。

 週が明けてお局が事務所に出勤した日。私は現場で食事介助をしているとホーム長が来た。

「土曜日にお局に電話したよね。あれをひどくお怒りモードで謝罪して欲しいって。施設長も隣に居て『非常識じゃね』って話で・・今ちょうど施設長が隣に座ってるから、今ちょっと行っておいで」

 すぐに行って謝罪。

「現場は週末も昼夜も無く回ってるからホーム長や管理者、ケアマネは休みでも電話がかかる事は茶飯事よね。でも事務方はそうじゃないんよ。・・」

と、施設長が私に諭すように言った。その優しい口調が不思議でもあった。もう一度お局に「申し訳ありませんでした」と言い「はい」と言われて事務所を出た。

 この時施設長が座っていた席は、私が事務所勤務の時に座る席だ。

 この席に座る人が長く続かない理由が分かる。 

「あんな所で仕事なんか出来ん。よく頑張るね」と色んな人によく言われる。

 自分ファーストって、こういう人。

 履歴書と職務経歴書を作成し翌日投函した。今の職場以外ならどこでもいいとさえ思った。その数日前に求人情報を見て応募した所があり履歴書と職務経歴書を送るよう連絡を受けていた。数日前に応募した時点では今より冷静だったのが救いだ。

 円満に辞めたいと思っていたのだが、明日出勤したくない。