「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

突然の入居申し込み 家族の意向を汲んで情報提供する

今週のお題「住みたい場所」 住みたいと思ってその場所に住める人は幸せだ。人生が終盤にさしかかった時、その場所をどう選ぶか、誰が選ぶか。その人の状態に合う条件の中で探し、選んで申し込みをして空きを待つ。

 土、日曜日は事務所の職員は休み、電話取次の為に外部契約で人を派遣してもらっている。N氏。

 職場復帰して1か月になろうとしたとき私は土曜日に出勤となり、N氏と隣り合って座り、一日の過ごし方を見ながらお願いしている仕事を一緒にした。いつも一人で週末を過ごすのに、初日以来初めて職員が隣に座って監視されてるように感じたかもしれない。まあその通りなのだが、午前中は少々緊張した空気が流れていた。お昼に少し話して緊張をほぐす。N氏は他所の施設で夜警の仕事をした事があり、建物の作りや施錠管理等も所によって違う等話してくれて「ここはいいね」と言っていた。私の気付かない良さや違いを教えてくれる。

 午前、玄関のチャイムが鳴り、N氏が郵便物を取りに行く様子を事務所から見ていると、休みのはずの施設長が入って来た。

「どう? 困ってない?」

 次の瞬間、外線が鳴った。

 N氏は玄関に出ているので、私が電話を取る。入居申し込みの依頼だった。週明けではどうかと尋ねたのだが、今は実家に居るが今日にも遠方の自宅へ戻るとの事で、対面で申し込みを受けるなら今日しかなかった。

「・・今日ですか・・」と私が言ったところで、側で聞いていた施設長がうんうんと頷いた。

「・・承知しました。では本日、お待ちしております・・」

 電話の内容から、特養、グループホームショートステイの説明と申し込みを受け付ける事とした。私はグループホーム担当ケアマネなので、ショートステイ担当から月曜日に連絡する旨もお伝えし、担当者と連携出来るよう施設長から指示を受けた。

「電話の受け答え上手じゃね。必要な情報もちゃんと取っちょるし。感じ良かったよ」

 素晴らしいタイミングで施設長が現われたものだ。

 しかも、褒められた😲

 この人、褒める事、あるんだ。

 嬉しい。・・というか、ほっとする。

 そういえば、以前もあった。苦情の電話を受けた時に、私が電話の向こうの相手にひたすら謝り、受話器を置いてほーっと息をついた時だった。

「上手に謝りよったね。私ならカチンと来そうじゃけど」

 

 午後、手続きに来られた。

 入居を希望する本人は現在入院中で、介護度の変更申請をしている。現在の介護度ではグループホームの対象だが、介護度が上がれば特養への入居も考えられる。しかし現時点でグループホームも特養も満床。退院後自宅での生活が難しいのであればショートステイを長めに利用しながら空きを待つ方法もある。待っている間に新しい介護度が通知されれば特養の対象になる可能性もある。グループホームの空室が先に出たら、入居してもいい。

 複合施設ならではの良さを実感されたようで、この近くに他にあるだろうかと問われたが、他所の事を言える立場にない。

 ただ、空室空床がいつ出るか分からないし待機者も数十人いるので、何件か他所にも申し込みをする事を勧める。

 

 何だか忙しい一日を過ごした。

 終業30分前にはN氏は「今日は疲れた。後は明日にしよ」と言い、片付けを始めた。

 私は翌日は休みなので時間いっぱい仕事をせざるを得ず、終業5分前には事務所に掃除機をかけた。

 朝、夕引継ぎをする宿直さんに「天然さんは朝来てすぐから、いつも全力ですね」と言われた。日中もずっと全力です。いつもバタバタしてる。

 

 今週のお題を書くにあたり、考えた。

 入院している本人が退院後「住む事になる場所」は「住みたい場所」ではないかもしれない。家族が選んだ「本人にとって良いと思える場所」であり、家族も安心出来る場所。いつか「ここに住んで良かったと思って貰える場所」になりたい。