「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

息子の就職 子育てを振り返る

エイプリルフールだけど、リアルに入所式があった。

 4月1日は息子の地元市役所の職員として初めての出勤日。

 私はたまたま休みだったので朝から洗濯や炊事をしながら、出掛けに記念写真を撮ろうと準備をして、身支度をする息子の様子を見ていた。

 息子はカッターシャツ、スラックス、ネクタイを締めて、玄関で時間を持て余している様子。

私 「早めに出たら?」

息子「8時にならんとクリーニング屋が開かんのよ」

 なんと、卒業式の後にクリーニングに出したスーツを取りに行くのを忘れて昨日行ってみたら、店が定休日で閉まっていた。朝は8時からの営業だ。

 8時少し前に「行ってくる」と車で出て行った。

「送り迎えしようか?」との言葉が喉元まで出ていた。でも言わなかった。息子からそう頼まれたら「いいよ」と二つ返事をするつもりだった。でも言われなかった。

 クリーニング屋は予定通り開いてただろうか。

 問題なく引き取れただろうか。

 職員駐車場に入るのも、停めるのも手間取ったに違いない。

 庁舎まで歩いて・・あるいは走って・・間に合っただろうか。

 遅刻したとしても、滑り込みだったとしても、本人の経験だ。

 考えてみれば、私がそういう子育てをしてきたのだ。

 息子は私をあてにしない。

 私は息子に細かい世話をしない。

 

 18時頃帰宅した息子を玄関前で記念撮影。疲れてニコリともしない。

私 「朝間に合った?」

息子「間に合ったよ。・・今日、〇〇さんにお世話になったから帰りに挨拶して帰ろうと思ってたのに、帰る時には忘れてた」

私 「月曜日に、今言った事そのまま〇〇さんに伝えるといい。そう思ってたって知ったら絶対嬉しい」

 息子はちょっとホッとしたように、頷いていた。

 こういう助言は出来る。

 息子がその気持ちを言葉で伝えてくれたから出来た。

 なかなかこういう事、言わないものだ。

 ただただ「疲れた」と、夕飯後すぐに自室へ籠ってしまった。ケーキを買っていたが、明日食べる事にした。

 そこへママ友からLINE。「今日、入社式だった?」と。そうだと返信すると、暫くして玄関のチャイムが鳴った。

 ママ友が来た。絶対息子の話だと思ったので息子を呼んだ。

ママ友「おめでとう! よう頑張ったね! 私が知ってる子供の中で、誰よりも色んな事頑張ってた! これから社会人じゃね。はい!」

と、彼女はプレゼント🎁の袋を息子に渡し、受け取った息子の手をしっかり握った。

 彼女が頑張ったと評価してくれているのは、息子がこれまで私を助けてくれていた事だ。学生の間もアルバイトをし、奨学金を受けて進学し、高専専攻科を卒業した。

 去年私が股関節の手術を受けた時に術前後説明を執刀医に聞いたり、私の入院中は独り暮らしだった。

 私が居なければ、就職でももっと羽ばたいていたのではと思う。

 手術から一年経ったが、今も傷が時々痛む。

 今の私の職場で3月末は離職者が多かった。私も最後の就活をしようかと考えている。

 去年暮れに住宅ローンの支払いが終わったのも大きい。

「俺が働くけー、母さんは仕事を減らしていいよ」と息子は給料のうちの5万円を毎月私の口座に生活費として振り分ける手続きをしている。

 息子がいつまでそうしてくれるか分からない。案外すぐに結婚するとか言って終わったりして。色んな意味で、変化の年になるかもしれない。

 

 初日を終えて、息子がおかしな事を言う。

「名刺作らなくちゃいけないんだけど、実費らしい。100枚くらいは作っておいた方がいいって。業者で頼むと何万円か言われたけど、自分で作れたらある程度自由度はあるみたい・・・」

 ・・・???・・・職員の名刺って、必要経費じゃないの? うちの零細企業でも事務所で両面カラー印刷してる。

「作業服が要るらしい。カッターシャツの上に着るんだって。『ワークマンあたりで買うといいよ。色はネイビーが多いかな』って言われてワークマンに初めて行ったけど、どれが「作業服」か分からんで、これ買った」と広げて見せた。

 ・・・???・・・部署毎に作業服無いの?

 ツッコミどころ満載の初日。エイプリルフールだから?

 これからまだまだ出て来そうな予感・・・