「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

「せんせい、ないしょだよ」小学1年生の日記

今週のお題「おうち時間2021」

 こもってる。

 で、長らく気になりながらも放ったらかしだった押し入れを整理してみた。

 今は成人した息子の小学1~3年生の頃の教科書やノート、図画作品等がたくさん出て来た。可燃、不燃、資源ごみ袋を用意し、片付けを始めた。

 教科書や算数ノートは迷わず束にして紐でくくるのだが、捨てられないのは「おたよりあのね」ノート。1年生では12マス×7行の1ページに日記を書いて、毎日必ず先生がお返事を書いて下さっている。1クラス30数人のを毎日子供達が居る時間中に読んでコメントを書いていた先生は、休憩時間も昼休みも無かったに違いない。

 

息子「11がつ14にち。きょう〇〇さんがけしごむをわすれて、せんせいにひどくおこられました。かわいそうだとおもいました。ぼくも、けしごむをわすれたらおなじめにあう。こわいな。」

先生「せんせいにかりにくるようにいいました。わすれたらこまるから、せんせいに いいにきたら せんせいがかしますよ。○○さんも ちゃんとつかって さいごに きちんと かえしましたよ。べんきょうが しっかりできましたよ。」

 

息子「1がつ29にち。せんせいだけにぼくのひみつをおしえます。ひるやすみに〇〇さんと□□さんと△△くんとめずらしい石あつめをしました。ばしょは木ののびてるとちゅうにかくしてあります。ないしょだよ。」

 先生は「ないしょだよ」の側に小さく「ハイ」と書いてから「あんぜんに、じょうずに、なかよくあそんでね。」とコメント。

 

 1年生が終わりに近い3月1日、

息子「きょう〇〇村□□え先生(担任)がはじめておやすみでした。ちょっとぐあいがわるいって2くみの先生にききました。はやくげん気になってください。」

先生「ありがとう。みんながこえをかけてくれたのでげん気になりました。」

 

息子「3がつ2にち。きょうおわかれえんそくがありました。おべんとうがうまかったです。とくにエビグラタンがおいしかったです。おかしを先生にあげました。おいしかったですか?」

先生「おいしかったです。ありがとう😊」ニコニコの絵も添えて書いてある。

 

 驚き関心したのもあった。

息子「10がつ14にち。きょうえんそくにいきました。いくのがつかれたのであかしんごうでやすみました。つかれてもがんばって、いうことばをわすれました。りんきおうへんってどういういみですか?」

先生「せんせいのおはなしをよくきいていてすばらしいですね。『りんきおうへん』とは6ねんせいにいわれたことばです。そのばにおうじて、じぶんでかんがえて、こうどうすることです。・・・」と、次の1ページ全体をつかってコメントを下さっている。

 10月以前のノートが見当たらないのが残念なのだが、1年生になってから「あいうえお」の文字を書く事を覚えた息子が、1年が終わる頃には読める字を書き、1ページの文字数をあらかた把握して文章を書いている。先生に伝えたい思いも表れ、成長が見られる。

 今更ながら、先生に感謝している。

 1年生の担任には「とにかく可愛い」と母性本能全開の表情で言われていた。

 業務に忙殺されながらも、そう思って下さるのは、本当に有難い。

 

 連絡帳もあった。

 2年生の秋、連絡欄に私の字が残っていた。

私 「最近筆箱の中の物を無くしているので落とし物箱を見に行くように言いました。最近○○君とのトラブルを聞いています。昨日は『鉛筆を貸せ』と言われたので断ったら取って投げられたので探したけど見つからなかったと言います。少し様子を見て頂けないでしょうか」

先生「落とし物の中を見ましたが名前が書いてないから違うと言っておられます。なくした時にすぐに探さないから分からなくなってしまうようですね。○○さんのことはよくわかっております。ご心配をおかけして申し訳ありません。」

 

 その後この件が解決したのか、記録も記憶も無い。

 1年生の時の担任教師だったら、こんな書き方はしなかったのではないか、継続的なやり取りがあるべきだと思った。

 子供にとっての一日一日は大切で、学年の一年間を受け持つ担任教師によって、親も子も随分変わってしまう。息子の日記も、2年生では淡々と出来事を綴るだけだった。

 それでも息子は嫌がらずに学校へ通った。私が同じ小学校の給食室でパートをしていた時期と重なるので、先生と直接話す事も出来たはずなのだが、あまり立ち入らなかった。

 

 小学校できっと色んな事が起こり、色んな感情があったに違いない。私はどれだけ息子の事を把握出来ていただろうかと感じた。

 あの頃に戻って抱きしめたい。

 

 息子が天使だった頃の貴重な記録を、私の宝物として、ジッパー付きファイルに入れて数冊保管する事にした。