「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

職場外での交流、懐かしい感覚が蘇る

今週のお題「最近おいしかったもの」

 転職して一年が過ぎ、職場の皆での会食に初めて参加した。

 毎年組合から斎場職員に親睦会名目でお金が出ているそうで、コロナの行動制限があった数年間は自粛していたが、制限が緩和された今年は新年会と兼ねて開催された。

 斎場窓口で受け付けや事務全般を担当する市の契約職員と、PFIで業務提携している私達企業の合わせて11人が初めて職場以外の場所で過ごした。

 月に一日、友引の日に斎場が閉鎖される。その前日の18時半に設定された。

 2時間飲み放題付だったので、迷ったが飲む事にして、その日の業務終了後に一旦帰宅して着替え、自宅と店の間にある無料で停められる駐車場に車を停めて店まで歩いた。

 初めて行く店だったが、少し離れた場所まで聞き覚えのある話し声が聞こえ、店の前で合流して店内に入ると、奥の座敷へ通された。

 数時間前まで一緒に仕事をしていたのに、職場とは違う場所で、私服で会うと随分雰囲気が違う。新鮮だった。

 ビールで乾杯した後、イワシの一夜干し、ローストビーフ、チーズ豆腐、もちもち揚げ出し豆腐、大根唐揚げ等、お店のこだわりがありそうな、どれも美味しいけれど、量的に物足りなさを感じ、時間を持て余していた。最後の土鍋ご飯でようやくお腹が落ち着くまでに、皆の声のボリュームが上がったせいか、始めは開いていた座敷の入口の戸が閉められていた。

 平日なのに店は満席で、偶然、斎場に出入りしている葬儀社職員さんが3人で食事に来ていた。年に2回定期開催しているとのことで、私を見て、

「なんか雰囲気違うね」と言われた。

 私は夜、飲みに出る事自体が記憶にないくらい久しぶりだったので、今回の食事会が楽しみだったし、定期開催と聞くと羨ましかった。

 この業界特有だろうが、週末ではなく友引の日が基準で、友引の日に印のあるカレンダーが職場の壁にかけてある。

 一緒にご飯を食べに行きたいと思えるのは職場の人間関係が良好であるが故だし、実際にご飯を食べて楽しいと思えば次につながる。そしてその人間関係を良好に保つ努力もまた、協力しながら長く勤務を続ける為に必要だと感じた。

 バブル経済末期に卒業、就職した私は、その頃週末毎に遊びや飲みに出かけ、職場の飲み会も頻繁だった。

 退職、結婚、子育てしながら働く間に、世の中は変わっていった。

 あの頃は一次会、二次会、何なら三次会が常だった。

 今回、2時間の飲み放題コースを終えて店の外で「お疲れ様でした」と挨拶して各々帰っていった。

 店が近隣の有料駐車場と提携しており、その駐車券を提示して3時間分の料金を現金で貰う職員もいた。

 私は息子に迎えに来てもらい、風呂に入って寝た。2時間で終わると分かっているから迎えを頼むことも出来た。

 翌日は二日酔いで自宅でぼんやり過ごした。

 やっぱ、時には飲みに出かけたいなぁと、長い間忘れていた感覚が蘇った。