「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

雪の日の反省

 10年に一度の大雪と言うが、10年前から今年までこんなに低い気温は記憶にない。

 出勤時間を1時間くらい遅らせて車に積んだ雪を落とし、エンジンをかけて家を出た。上り坂をゆっくり進んでいたら、職場の上司から電話。車を停めて話して良かった。現在地を知らせると、その先はノーマルタイヤでは厳しいだろうから引き返して自宅に車を置くよう指示を受けた。そして自宅の近所まで迎えに来てくれた。

 助手席に乗せて貰って私が引き返した同じ道をゆっくり走る。「ここで電話を受けて引き返しました」と告げた。その坂を登った頂上辺りの道路は凍っており、その後の下りは滑り降りる様相。受けた電話が1分遅かったら私はこの坂で立ち往生していただろう事が容易に想像出来ゾッとした。

 職場は山の中腹にあるので、いつも通りに出勤した職員達は雪かきや除雪剤まきに追われていた。そこへ上司の車に乗って出勤し恥ずかしいやら申し訳ないやら反省しきりだった。

 パートさん達と雪の中どうやって出勤して来たかと話題になる。

私    「迎えが来ました」

パートさんA「まぁいいわね。アッシー君来てくれたの?」

パートさんB「あーら、アッシー君?」

私    「違う違う、〇〇さんです!」

 大変な誤解を生むところだった。言葉には気を付けなくちゃ。

 上司は遠方から毎日片道1時間以上かけて通勤している。この日は雪の為渋滞や通行止めで3時間位かかったそうだ。そして到着したら私を心配して電話をくれた。

 職員の中には自家用車を諦めて電車と徒歩で来た人や、家族に送ってもらった人、自宅から歩いて来た人、責任者にいたっては事務所駐車場で車中泊した等聞いて、私も次は早く家を出て歩いて来なくてはと、自分が情けなくて仕方がなかった。

 

 この日の火葬は、遺族が雪で来れないからという理由で1件翌日に延期になったが、その他は予定通りに行われ、お見送りの遺族の人数もほぼ前もって連絡を受けていた通りに来られていた。

 収骨の際、集まった遺族に「台車の周りが熱いのでお気を付けください」と注意を促すのだが、傍で「ああ、お父さん、あったかい」という声が聞こえた。