「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

霊柩車と自家用車で到着時刻が違う

今週のお題「かける」

 葬祭業でも接客が主な仕事なので遺族に声をかける事から始まる。

 葬儀社から斎場へ故人の棺と共に霊柩車に乗って来る方が喪主とは限らない。どんな方が来られるかも当然だが分からない。たいていは故人の家族が遺影や位牌を持って霊柩車の助手席や後部座席に乗り、斎場到着時には故人の棺と共に車を降りて告別室に入る。

 斎場職員に特に対応して欲しいと言われる事は稀で、事前情報も無い。次に到着する予定の霊柩車に乗って来る方が足が不自由な方だと分かっていたら、葬儀社アシスタントがあらかじめ車椅子を用意する場合がある。

 杖を持って下車しようとする遺族を、一緒に乗って来た霊柩車の運転手が手伝う場合もある。

 その日も何も聞いていなかったのだが、霊柩車が到着して助手席のドアを開け、いつものように「お疲れ様でございます」と挨拶したら「あああ、あああ・・」と言うばかりで、状況が理解出来ているのか、こちらの言う事が分かるのかも不明な様子。助手席のドアを開けて挨拶した若い男性職員が驚いて固まってしまっていた。傍で後部座席に誰も居ない事を確認した私が、変わって対応した。

「あああ・・」「大変でしたね」

「あああ・・」「立てますか?」 手を取り腕を支える。

「立てるぅ・・」「ゆっくりどうぞ」 両手で支えて下車し、告別室ソファに座って貰う。背もたれがなければひっくり返ってしまいそうで上半身を支えていた。遺族が息を切らして到着し、私は傍を離れた。心配されていたようだ。斎場棟前に横づけされる霊柩車と受付棟前の広い駐車場に駐車して受付を経由して斎場に来る遺族にはかなりタイムラグがある。その後その方は2人の遺族に両腕を支えられて歩いていた。

 どなたも一期一会なのでその場しのぎではあるが、声のかけ方も支え方も車椅子の使い方も、介護の経験がなければ出来なかったと思う。

 寒くなって、夏~秋 ×(かける)2~3倍近く、一日の火葬件数は増えている。

 以前はほとんど葬儀も火葬も行われなかった友引の日も、行われるようになった。

 早く暖かく過ごしやすい気候になるのを願う。