「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る元介護職兼介護支援専門員の日常

炉前の人間模様

 葬儀社での告別式を終えて斎場に来られるのは故人に近い関係の遺族が来られる場合が多い。コロナで人数制限が設けられていたが、最近は多少緩和されている。

 火葬炉に入る棺を見送る前には色んな人間模様がある。

「ばあちゃん、目を覚ませ! 今なら間に合うぞ!」と呼びかける。

 棺から離れられず顔を触り続ける。

 泣き崩れて名前や火葬炉の確認もままならない。

 

 棺を火葬炉内へ見送り、扉を閉じて収骨までお待ちいただくよう説明をして遺族が待合室へ向かい始めた時、喪主である年配の女性が私に近づいて静かに言った。

「もう火は入りましたか? 燃やさんでください・・」

 点火ランプは既に点いていた。私がそのランプを見上げたと同時にその女性も、付き添いの男性も同じランプを見ていた。この斎場では遺族や炉前の職員が押す点火ボタンは無い。一同合掌、礼拝して炉内へ見送り扉を閉じたら火葬が始まる。

「ああ・・」私は言葉が出なかった。

 男性がその女性の肩を抱えるようにして「いいんです。すみません」と私に言い、ゆっくり出口へ向かって行った。言葉に言い表せない感情があふれた。私はその場を動けず、少しして責任者が来た。

「どうした?」と問われ、話すと、慣れた様子でうんうんと頷き、次の仕事へ行ってしまった。

 あるあるなのかもしれない。

 私に免疫が無いだけ。

 気になっていたのだが、一時間後に収骨に来られた時には大丈夫な様子でホッとした。この一時間の間にどんな会話がなされ、どんな心境の変化があったのだろうと想像する。

 色んな人間模様を見る。

 ここは故人を見送る方々が静かに考察する場でもある。

 職員として一通りの口上や立ち居振る舞いは習った。

 まだ余裕は無い。

 周囲の状況と自分の立ち位置で臨機応変に対応できるようになりたい。