「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

続・偏見

 採用面接から日にちが経ち、何度も連絡を貰っていたにも関わらずこちらの携帯電話が受診していなかったせいで諦めかけていた。

 採用担当者に電話し謝罪すると、まだ採用審査は続いているとの事で、現場見学を打診された。

 受付から火葬、収骨迄の一連の流れを見てもらうと言われ、

「地味めの服装で来てください・・面接の時みたいな」と言われた。

 面接には黒のパンツスーツだったので、同じ服装で出かけた。

 従業員駐車場から事務所に案内され、先日の面接官一人と現地責任者一人で対応された。築45年の建物で何もかもが古い。

 今日はざっくばらんな感じだった。

 一番気になっていた事を尋ねてみた。職場の人間関係だ。わずか5人の職場で気が合わない人が一人でも居ようものなら最悪だ。今回欠員補充との事だったのでその理由も合わせて尋ね、ここは良好と感じた。男性ばかり4人の職場へ、私が入ろうとしている。私の前も、その前も5人目は女性だったようだが、何故か女性達は勤続年数が短い。逆に男性達は10年を超え、短い人でも6年という大ベテラン揃い。

 ここでも家族親戚に反対されなかったかというのが話題になった。

 責任者は時間はかかったが今は義両親に理解してもらっていると言われた。

 私はこれまで転職するにあたって親兄弟に賛否を確認した事はない。

 特に反対された記憶もないし「誰が何と言おうとこの仕事をしたい」との確固たる信念を持って転職をした事もない。「やってみよう」と思って始めて、どの職種でもそれなりに努力した。今回初めて相談して猛烈に反対された。この転職は信念が必要なようだ。

 いちばん厄介なのは、今日着たスーツを初めてクリーニングに出したいと思った、貰ったペットボトルのお茶を飲めなかった自分の気持ちが、自分で理解出来なかった事だ。

 自分の中にまだ迷いがあるということか。

 現場を失礼して2~3時間後に電話がかかってきた。

 健康診断を受けて結果を本部へ郵送するようにとの事だった。それに加えて、

「あれからどうですか? もしかして、やっぱり辞めようかなと思ってますか?」と尋ねられた。

 そう言われると・・・「いえ、それはないです」と答えたが、健康診断は自費だし、それを送らなければ採用の決定は出ないという。つまり早めにって事ね。

 3か月以内に今の職場で健診があればそのコピーで良いのだが、毎年年末だ。

 帰りに自宅近くのスーパーで買い物したら、そのまま歩いて帰ってしまって、自宅前に自分の車が無いのに驚き、スーパーに車置いたままだった事に気付いた。

 平常心で居られない。

 

 遠方に住む娘は「急がないならじいちゃんと折り合いつけてからが無難じゃない?」と言い、同居の息子は「今の仕事辞めたいんじゃろ? ずっと求人見ててそこが条件が良かったんじゃろ?」とそれぞれ冷静に意見をくれる。

 条件も色々で、出来るか、やりたいか、暮らせる収入か、保険関係等、見比べた。

 一長一短ある。

 今自分の中で決めてるのは「介護からの卒業」