「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

危険物資格取得 手当は月額500円

  5月の事前講習会で、前回の乙四試験前期日程の合格率は19%だったと聞いて震え上がった。化学の得点率が低かったらしい。そんなに難しい試験に挑もうとしているの? いや確かに難しい。

 法令、物理・化学、性質・消火の3科目に分かれたマークシート方式で、各々60%以上正答すれば合格。1科目でも60%を下回ると不合格となる。

 ゴールデンウイークに帰省した娘にテキストを見せ、化学の問題の解き方を習った。まるで知識の無い私に辛抱強く教えてくれた。

 試験日まで毎日化学の問題を必ず解く事を自分のノルマにして、3教科5科目のセンター試験さながらに勉強するのだが、いかんせん、覚えられない。カレンダーの裏に公式や性質、覚え方を表にしてキッチンやダイニングの壁に貼り、見ては唱え、追い込みをかける。

 毎晩夕食後にダイニングテーブルにテキストや計算用紙等を広げて勉強している私に息子が「上がるよ。ほどほどにね」と言って2階の自室に上がって行く。

「ありがと。おやすみ」と私は答える。

 試験当日は息子が会場まで送迎してくれた。それだけでも元気が出る。

息子「着席出来たら連絡頂戴。帰るから」って。

 この心遣い。嬉しい。

 試験は2時間あるのだが、試験開始から35分を経過すると申告して退室出来る。

 35分経って試験監督が退室希望者に挙手を求めると、全体の3分の1もいるかと思われる程多数の手が上がり、その後も退室が続き、2時間経って終了の声がかかった時には私ともう一人だけになっていた。それでも私は見直しが完全に出来ていない状態だった。一番後ろの席だったせいで、受験者が次々と私の横を通り後ろのドアから出ていくのが分かり焦った。

 3週間経って合格発表の日。前期日程で受けたもう一人と職場の控室で検索し、ホームページの合格者速報に番号を見つけた時には瞬時に手を出され握手した。嬉しいというか、ホッとした。後期日程で受けた一人も合格していたので、責任者が

「ありがとう。全員合格して鼻高々だよ」と言った。

 逆に一人落ちてたらと思うとその空気感たるや、想像するに恐ろしい。

 数日後、合格通知が書面で届いた。正答率が法令86%、物理・化学100%、性質・消火80%と記載してあった。娘と息子に感謝しかない。

 職場で3人で県証紙はどこで買い、切手はどの封筒にいくらのものを貼るとか申し合わせながら登録申請手続きをした。

 会社から資格取得の為の受験費用や登録の為の証紙や切手代まで世話され、実費は自分で購入した参考書代と講習会受講料くらいだった。

「で、手当っていくら付くんですか?」と一緒に合格した若い職員が尋ねた。

先輩「そんなに期待する程つかないよ」

若い職員「諭吉先生じゃないって事ですか?」

先輩「ないない。んなわけないじゃん」

若職「あの、女性の? 津田さんですっけ?」

先輩「それもない」

若職「え? 野口さん? ぱっさぱっさ何枚くらいですか?」

先輩「いや、ぱっさも無いよ」

若職「え? ぱっさの一枚も? 」

先輩「そうそう。チャリーンくらい」

若職「大きめのチャリーンですか?」

先輩「まあ、そうじゃね・・」

 合格するまで半年毎に受験し続けなければならない圧力があった割に、業務上必須な資格って程でもないらしい。

 表向きに「職員全員資格持ってますよ」的な会社の方針って。

 無くても仕事内容は変わらないから。

・・・そうなんだ・・・

 いやいや、そんな風に思っちゃいけない。貰えるんだから有難いと思わなきゃ。

 いや、でも・・そうなんだ・・