「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

入居者の退去で思う事

入居者が退去となる理由は様々だが、共通するのは、その時はいつも突然やってくるという事。

 前日の日勤では考えられなかった事が、翌日夜勤の為夕方出勤すると起こっていた。

 とひさんはもう居なかった。

 朝ごはんの途中でご飯を口に入れたまま、だらんと腕を降ろし、意識が無くなった。

 救急搬送され、脳にその原因と思われる血栓が見つかった。

 脳梗塞

 コロナ騒動で家族さえも本人に面会出来ず、施設も、病院の地域連携室との連絡にとどまる。

 

 家族の意向で居室はそのままにしていたのだが、病院の勧めで、施設に戻らず別型の病院で療養する事となり、施設は退去となった。

 数日後、娘様が居室の荷物を大きな袋に入れて持ち帰られた。

「お世話になりました」と気丈に振舞われ、その心を図りかねた。

 施設や私達に対して恨み言は一言も言われなかった。

 言いたい事はあったのではないか。

 とひさんが入居してからの日々が蘇ってくる。

 私達は精一杯心を尽くしてケアしていただろうか。

 

 とひさんの場合は、病院を経由していつか再入居する可能性はある。

 

 でも何故か気持ちがざわざわした。

 今居る入居者だって、いつが最後になるか分からない。

 日頃の自分の言動を省みる機会となった。

 

 時を同じくして、次の入居者面談が始まっている。