「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

熱中症 無自覚の恐ろしさ

 独り事務所で自分を追い立てながら溜まった仕事を片付けていく。

 研修課題も仕上げなければならない。

 昼頃、頭痛があった。

 疲れたと思い、昼休憩をとった。

 午後2時を回る頃、嘔気がした。

 息が苦しいせいだと思い、マスクを外した。

 3時近くなり、吐いてしまえば楽になるかと、口に指を入れて嘔吐したが、楽にはならなかった。

 常備していた解熱鎮痛剤と胃腸薬を飲んだ。

 頭痛と吐き気はひどくなる一方だった。

 フロアから職員が何か用事があって来たのだろうが、私の顔を見て、今日休みのリーダーに電話した。

 そしてコップに、毎日入居者用に用意しているスポーツドリンクを持って来た。

熱中症じゃね?って、リーダーに言われたよ」

 そういえば朝家を出てから昼にコップ一杯のお茶を飲んだきりだ。

 せっかく持って来てくれたスポーツドリンクを飲もうとしても体が受け付けない。

 ちびちび時間をかけて飲む。

 体の中に行きわたるような感じだった。

 両腕に鳥肌が立つ。

 パソコンの前に座っていても、作業効率が下がっていた。

「帰った方がいいよ」と言われたが、この状態で駐車場まで歩き、運転して帰る自信がなかった。

 いきなり「ホイ、差し入れ!」とほっぺに冷たいペットボトルを付けられた。

 休みなのにリーダーが来た。

「大丈夫かね? 顔色悪いね」

「・・・すみません・・・」

 コップのドリンクを飲み、ペットボトルのスポーツ飲料を飲むうち、生き返ってきた。

 薬じゃない、水分が必要だったのだ。

 退勤時間が近くなるころ、気分は最悪を脱し、作業出来るようになってきた。

 しかしリーダーに「帰ろ」と促され、駐車場まで一緒に歩いた。

「それだけ歩ければ大丈夫そうだね」

 私を家まで送るつもりで来たらしい。

 ・・・重ねて、すみません・・・

 数日して、朝の情報番組で、熱中症の説明があった。

 頭痛、嘔気、嘔吐は中等症との事だった。

 事務所では暑くも寒くも感じていなかった。

 でも、私は熱中症になった。

 入居の高齢者には散々水分を勧めておきながら、自分はお粗末なものだ。

 翌日から水筒を持参し、いつでも視界に入る机の上に置いて仕事区切りの度に飲むようにしている。