「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

棺の中に入れる副葬品は可燃物を

 斎場での私の仕事はほぼ接客業務。

 火葬業務は一通り教えて貰うが、それは火葬を担当する職員の動きを理解した上で接客をして欲しいとの責任者の指示だった。

 ある日突然「今日火葬やってみる?」と責任者に同行して貰い実際の業務を担当した。

 それから数日後「今日またやってみる?」と言われ同じように同行付きで実践してみる。

 当日の火葬は前日までに役所から火葬許可証が発行されたものに限られるので、前日夕方か当日朝にその日の火葬件数と受け入れ時間が決定している。責任者がその日の出勤職員のメンバーと火葬予定表を見て「今日なら新人の私に付いて業務が出来る」と判断するので、どうしても当日朝急に打診されることになる。

 そして三度目も突然「今日もう一回やってみる?」と言われ、その日の最後には

「困ったら呼んで」と言われて一人で進め、何度か助けて貰った。

 途中で30分休憩時間を取るよう言われたのだが、火葬が始まっていたので教えて貰える数少ない機会を逃すのが惜しくて火葬炉を離れなかった。

 築40数年の古い火葬場なので、ガスと重油を使い炎と空気の量を調節しながら焼け残りが無いよう小窓から直接覗きながらデレッキで動かす。

 始めは正直、怖かった。

 まともに炉内の様子を見る事が出来るだろうかと思っていた。

 予想に反し自分でも不思議なくらい冷静だった。

 多分責任者も私が「無理です」と言うのを予想していたのだろうが、むしろ熱く炉に向かっている様子を見て「またやってみる?」と問われた。私は「火葬業務が出来るようになりたい」と答えたので、また近いうちに実践の機会を貰えそうだ。 

 火葬を担当すると接客業務に比べ格段に言葉を発しない。

 ただひたすらに炉内の故人と無言で向き合う。

 年齢や体格、性差、病気等により火葬時間や火力、お骨の状態は一人一人違う。プライバシーにかかわる情報を事前に貰える訳ではないので、火葬をして初めて「少し時間がかかりそう」「骨が脆い感じ」「自身の脂肪で燃焼温度が上がっている」等分かる。

 お骨を出来るだけ綺麗な形で残したい。

 白木の棺にご遺体だけを入れて火葬すると真っ白な遺骨となる。

 棺の装飾や棺の中に入れた副葬品により、遺骨に色が付く事が多い。先日は喉仏と思われる部分に副葬品が溶けたらしい物質が付着して破損しており、喉仏と判断が付かず収骨されなかった事例があった。

 棺の中に故人の馴染みの物や大切にしていた物、遺族からも思い思いの物を入れるだろう。故人を思っての最後のメッセージでもある。故人のご遺体と共に灰になり、収骨されなかった遺骨と灰はその後供養される。

 火葬後、収骨前に整骨しながら自分の火葬の成果(?)を見る。

 当然だけど、これからだ。

 この方のお骨を最大限綺麗に残せる火葬をしたい、と毎回思う。