「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

面会制限 職員の葛藤

 少し前、入所していたぎちさんが亡くなった。

 前月に102歳の誕生日を迎え、お祝いして笑顔も見られていた。

 その頃緊急事態宣言が解除されて面会制限は緩和されてはいたが、他者と時間が被らないよう予約した上で、15分以内でスクリーン越しに面会するという事になっていたのだが、暗黙の了解で30分位経つ頃に「そろそろ・・」と声をかけていた。

 ぎちさんは看取りの時期に入っていたので家族の面会は頻回にあった。

 亡くなる数日前からは予約せず毎日来苑されるようになった。

 前日は夜遅くまでぎちさんの居室に居た。

 その日も予約無く来られてから1時間後に、ぎちさんは看取られながら亡くなった。

 家族が家族を呼び、大勢になった。

 その後身体を拭いたり着替えや化粧等エンゼルケアをする間、家族には別室で待機してもらっていたのだが落ち着かない様子で、暫くするとぎちさんの居室に入っていった。

 「他の入居者もいるのに、家族が勝手に施設内を歩いているのはどういう事か」と私達は上から注意を受けた。

 2年近く前にぎちさんのご主人が亡くなっている。「お父さんの時は看取らせてもらえなかった」と恨めしそうに家族に言われ心が痛んだ。その頃コロナがパンデミックになって面会出来なかったのだが家族は遺恨だったに違いない。世間でも親の死に目に会えない、火葬に立ち会えない等話題になっていた。

 一職員でありながら、自分の家族だったらと考える。

 コロナが早く終息してほしいと願うばかりだが既に新株情報もあり4回目のワクチン接種案も浮上している。

 今施設に入ったら会えなくなるからと、自宅での介護を継続している人もいると聞く。無理をしている人がきっといる。共倒れにならないとも限らない。

 施設職員もまた、心身共に極限状態にある。