「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

娘2年ぶりの帰省 子離れ出来ない親心

 先月末、娘がいきなりLINEで帰省の予定を知らせて来た。しかも決定事項として飛び石の月曜日に休みを貰い、4連休にして帰ると。2年以上ぶりだ。

 それなら私も月曜日に有給を申請したい。

 隣のお局にどう切り出すか。先日の大声吐き出し事件以来、究極に気を遣って毎日ヘトヘトだ。

 以来一日一日、機会をうかがい、言えずに悶々としながら一週間が過ぎ、有給を申請する期限の日に、お局の仕事の区切りが付いたのを見届けて切り出した。

「そういう事なら、届出しぃ。ほら、期限よ」

 秒で書いて提出した。

 娘から彼氏と一緒に来ていいかとLINE。

「え?」と返した。

 それから数日が経ち、

「まあ、久しぶりだから一人で帰ってもいいけども」と返信が来て、この度は単独で帰省した。

 片道600㎞。高速道路8時間の道のりを運転してくる。私は途中の駅まで電車で行って一緒にご飯を食べ、車に乗せて帰って貰おうとしたが、電気系統の故障とかで電車が不通になっており、仕方なく自宅で待つ事にした。早朝出発して夕方到着。玄関に置けない程の土産。彼氏のお宅から米5㎏。兼業農家で今年取れたばかりの新米だそうだ。台所に立つ私の側に来て、

「彼氏のお母さんから」と菓子箱が二つ入った紙袋を置いた。

 翌日、息子も一緒に県内の観光地をドライブした。翌月曜日は私は有給だが息子は学校があったので、実家に顔を見せに行ったり、買い物したりした。

 娘と2人だけの時、ずっと気になっていたであろう事を娘が言った。

「彼氏も来るの楽しみにしてたけど、母さんが何かあれやったから・・・気にしてるんだけど。お母さん何か言ってる?って」

 彼氏は悪くない。

 ご両親からの心遣いも感じる。

 稲刈りの手伝いに行くし、米はいつも貰うから買った事無いと娘が言う。

 良くしてもらっているようだ。

 あちらのご両親宛てに、菓子と酒を娘に持たせた。

 今回の帰省で結婚すると宣言するのだろうかと思っていたが、それは無かった。

 家族水入らずで過ごせるのはあとどれくらいだろう。

 他県の役所で保健師をしている娘はコロナに敏感で、この帰省により今後2週間は接種関係業務は出来ない。それを承知の上で職場の上司が帰省を認めてくれたとの事だった。

 どうしても伝えたい事があって帰省したのではなかったのか。

 あっという間に2日過ぎて、娘は戻って行った。

 あれから日にちは経っても、思い出す度、幻のように感じる。

 いつまでも子離れ出来ずにいる。

 世の中の親御様たちは平気なんだろうか。

 私は娘の幸せを阻んでいるのだろうか。