「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

こんなに人になりたいと思える人に出会う

入院中に、素敵な看護師さんに出会った。

 入院初日、執刀医、麻酔科医、薬剤師、栄養士、機能訓練指導員・・・入院中にお世話になる様々な役割の方々が病室に挨拶に来られた。

 その中に、翌日の手術の担当となる看護師Tさんがいた。

Tさん「明日、手術の担当をします、Tです。お身体の調子はどうですか? 心配事はありませんか? 明日、手術室でお待ちしております」

 多分、セリフは決まっているのだと思う。

 でも私と同年代と思しきその人には、独特の雰囲気があった。

 柔らかな振る舞い、声のトーン、言葉の間合い、眼差し・・・

 思わず私の口から出た言葉が

「担当の看護師さんが苦手です」

 ハッとして、困ったような表情をされた。

 ベッドの枕元に、担当医と担当看護師が明示されている。

 若い担当看護師は、物言いも態度も今時の若いお嬢さん風で、決まった仕事をさっさと済ませるタイプの人のようで、心を感じられなかった。

 

 翌日、若い担当看護師に連れられ、緊張気味で手術室へ向かった。

 迎えてくれたのは、昨日のTさん。

 ほっとした。嬉しかった。

 担当看護師は、手術用の帽子を私にかぶせたのだが、そのゴムが目の上に来て、私が目を開けられずにいるのに気付かない。それに気付いたTさんが「あ、ゴムが」と直してくれた。手術着の上に羽織っていたものを担当看護師に脱がせられながらよろめいた私をTさんは支えてくれた。Tさんは困惑した表情だったが何も言わず、担当看護師から申し送りを受けて、私を手術室の中に案内してくれた。きっと、私が何も言わないのと一緒だと感じた。手術台の上で麻酔が効いて眠るまで、その優しい雰囲気で、私の傍で声をかけてくれていた。

 

 Tさんと会ったのはその2回だけだったが、私はケアマネジャーとして仕事をする手本にしたいと思った。同時に私はどんな対応をしていただろうかと振り返った。

 同じ仕事をするのにも、大きな違いがある。

 忙しくて文字通り心を亡くしても、また思い出して心がけ、いつか私自身に身に付くように。

 備忘録としてここに記しておく。