「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

田舎の良さ

 行楽の時期。娘から地域の秋祭りで自分が勤める施設が解放されるから見に来るかと誘いを受け、行ってみた。

 新卒で採用されて半年になる。初めての独り暮らしの様子も気になっていた。

 山に囲まれた静かな田園地帯にある祭り会場は大いに賑わい、皆がここに集って地域が空っぽになっているかのようだった。

 体操教室に参加してみた。20代と思われる指導者と、参加者の大半は高齢女性。

指導者:「いつもの皆さんがお揃いですね。今日は私、自転車で来てみました」

参加者:「えー⁉」

指導者「一時間くらいかかってしまって、帰りがよだきいなあって思ってます」

参加者:「軽トラで送ってあげるよ」

 会場のあちこちから声が上がる。田舎最高!

 

 娘の仕事ぶりも見る事が出来た。ちゃんと窓口で対応している。

 私を「母です」と職場の人に紹介してくれる。だから挨拶出来る。どなたも一様に明るく自己紹介してくださる。そんな職場の上司や先輩方に恵まれて娘は学び、成長している。

 自宅から遠く離れたこの地を選んだのは娘自身だった。大学の同級生たちもほとんどが都会へと向かって行った。職場には信頼を集めている上司や尊敬する先輩がいて、日常的に傍で教えてもらっているのだと言う。「自分の地域の保健師さんはこの人」と地域の皆さんに思って貰える人材になりたいと言っていた。私が娘の年の頃はこんな風に考えは及ばなかった。我が娘ながらあっぱれだ。

 

 祭りの後で、娘が「空気が違う」と勧めてくれた神社に参った。

 私の子育ては間違ってはいなかったんだろうなと、嬉しかった。でも、

「報告があります。彼氏が出来ました」

 ・・・複雑な心境で娘のアパートを後にした。