今週のお題「理想の老後」
そりゃあね、広い自宅でのんびり、食事はお取り寄せ高級松阪牛で・・・暮らしたいものです。でも、介護職の給料じゃ年金も知れてる。自分が生きている限り働かなくちゃ年金だけでは生きられない事はだいたい想像がつく。
入居者を見ながら、自分はどんな高齢者になるのだろうと考える事がある。
こんなおばあちゃんになりたいと思う対象者もいる。
しかし認知症になったらどうだろう。
80代半ばのりきさんは、入居して1年になる。入居時に介護保険証の更新があり、介護度が一つ上がった。あれから1年になるからと医師の指示を受け認知症の簡易検査である長谷川式スケールを実施したところ、答えられず途中で怒り始めた。
「私は○○企業の□□部長をやっとったんだ。なんだ、バカにしおって!」
「ごめんなさい、ごめんなさい」と言いながら、テストを実施した看護師が事務所に入って来た。
暫く顔を見せない方がいいだろうから、あとはお願いねと託されたのだが、その直後、日課の体操を皆と一緒にする間に忘れた様子で、体操の後コーヒーをおいしそうに飲んでいるのを見てホッとした。
りきさんは、自分が答えられない事をわざわざ尋ねる相手に腹を立てたが、認知症でなければ、問いに答えられない自分自身に腹が立っただろう。
以前デイサービスに勤めていたころ、一般フロアから認知症フロアへ配置換えになった時、迎えてくれた主任が私に言った。
「認知症の方のお世話は大変だけど、喜びも大きい」と。
実際、実施するレクリエーションは全然違った。笑うツボも違う。独特の世界観の中で、一人一人の症状に合う関わり方を模索する。
認知症に助けられる事がある。
忘れてくれるので、リベンジ出来る。嫌な事が分かれば、介護する側は次に活かす事が出来る。
私が将来認知症になったら、心ある人に介護してもらいたいと思う。
どんなふうにしてもらいたいか、してもらいたくないかと考える。
「認知症になる前は、すごく優しくていい母だったんです」と娘様が言われるのを聞き、これだ、と思った。今、私はすごく優しい、すごくいい人でいよう。それなら今出来る。
老後に功を奏する事を願って。