「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

エイプリルフールに罪の無い嘘をついてみた

「今日は4月1日。エイプリルフールって知ってます?

 一年に一日だけだから、罪の無い嘘をついてみようと思います。

 ・・・え~っとね・・・

 私、二十歳!」

 認知症ばかりの高齢者入居施設でもその症状には違いや差があって、反応も様々。

「ええじゃ。十分通用するよ」と言ってくれた84歳のツ子さんは、私の顔のシミとしわが見えづらいくらい、程良く目が遠くなっている。

 キッチンで作業していたスタッフが大笑いした。

 89歳のミサさんは黙って怪訝な表情で私を見ていた。

 4度目の二十歳を超えている入居者の中にいて、2度目の二十歳をとうに過ぎた私がそれを言うのは、実は罪なのかもしれない。

 それ以上、その話題には触れなかった。