「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

今週のお題「お弁当の思い出」

高校は毎日弁当持参。給食と決定的に違うのは、朝からずっと自分と一緒にあるということ。共学でありながら男女別クラス、その理由は学校側に言わせれば「勉学に女は邪魔な存在」なのだそうで。
 県内片手の指に入る進学校であったその高校での女子クラスは最高に楽しかった。
 午前中4時間、その3時間目が終わる頃にはおなかがすいている。
 一年生のときは、手作りクッキーやクレープを仲間内で交換しながら楽しく美味しくこっそり食べていた。
 二年生になると3時間目の終わりと共にカーテンを閉めて早弁するのが常となった。そして午前の授業が終わるや、ボールを持って飛び出して、運動場の目当ての陣地をとり、小学生さながらに長い昼休みを満喫した。4時間目に授業に来る先生には隠し切れないその匂いで、早弁女子クラスは職員室では有名になっていた。
 そして三年生になっても早弁は止められなく、昼休みの目的が変わった。図書室で勉強する席を確保するためだ。結構これが争奪戦だった。
 その頃、学校に居ついた小型犬がいて、なかなか愛嬌があり、クラス内では “犬貴(いぬき)”と名をつけて可愛がっていた。ある日、いつものように教室にカーテンを閉めて早弁したあと、教室移動があった。4時間目始業のチャイムが鳴って
「もうそんな時間!!」
と皆で慌てて特別教室棟へ走った。
 そして教室に戻ってびっくり。
 一人の弁当が荒らされた痕が見てとれた。怒り狂った彼女、
「いーぬーきー!!!!」
と叫んで走り出て行った。全力疾走する犬貴と片手振り上げて追いかける彼女の姿が2階の教室から見えて、笑っちゃいけないけど皆で大笑いせずにはいられなかった。食べ物の恨みは恐ろしいのだ。
 その後早弁が無くなったかといえば、そんなことはなく、食べ終わった後、「蓋して袋に入れてバッグに終う」までを徹底するようになった。