「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

職場復帰には準備が必要

 術後3か月になるのを前に、診察を受けた。

医師「調子はどうですか?」

私 「お陰様で、動作で痛みがある時もあるけど、日常生活は大丈夫です」

 診察台に上がり、両足の長さをそろえ、右足を医師が動かす。仰向けで内点、外転、屈伸。横向きで足を上げる、広げる・・・全部途中で痛みが出る。今回、その痛みの部位がはっきりした。

医師「大転子だね」

 そして改めてレントゲン画像を見ながら、手術して体内に入れたものは体に馴染んできており、その周りの筋膜の一部に炎症があって痛みが出ているが時間と共に良くなると説明され、鎮痛消炎剤が貼り薬で処方された。

 職場復帰に関して、仕事を尋ねられ、介護職だが見守りと事務が主になると言うと

医師「全然問題ないですね」

とお墨付きを貰い、診断書と傷病手当申請書をお願いした。リハビリはもう受けなくてよいと言われた。

 レントゲン3枚、診察、診断書、湿布5袋処方されて660円。更生医療の恩恵を受け、今回も安かった。やはり会計窓口で更生医療の証書の提示を求められた。「紫色の保険証みたいなの」と言われたが、持っていないと告げるしかなかった。前回の受診時にも会計窓口で同じように提示を求められたが持っていなかったので、後日居住市役所の福祉窓口で尋ねたが発行していないとの返答だった。なのでそう答えると、持っている人と持っていない人がいるからいいと言われた。だがそれも6/6で期限を迎える。次回の受診からは、3割負担だ。

 病院から職場に行き、ホーム長に結果を報告して来週から出勤すると伝えた。管理者からは、人を抱える等の介護はしなくてもフロアで入居者の見守りの目は欲しいから、溜まっている事務をしながら、フロアにパソコンを持ち込んで入居者の見守りもするよう言われており、私もそのつもりでいた。

 ところが、その後施設長室に呼ばれてこっぴどく叱られた。

 施設の中には特養、デイサービス、ショートステイグループホームがあり、私はグループホームで介護をしながら計画作成担当者として家族と連絡を取ったり書類を作ったりする仕事をしている。足の具合が悪くなってから、施設内他部署の事務を習って担うようになり、介護のシフトに入る日数を調整していた。その、施設の事務をどう考えているのか、施設長に事前に復帰に関する相談が無いのはどういう事かと叱られた。グループホームのホーム長と管理者とは休職中も何度もやり取りして意思疎通出来ていたが、施設長とはそれが出来ていなかった事が原因だった。グループホームでも、施設でも、それぞれに私の復帰後の居場所を考えてくれていた事がその面談で分かった。有難いと思い、その場で「嬉しい」と口に出たのを更に怒られた。

 大きなマスクをしてさえもその上の目力だけで周囲の空気をキンキンに冷やす施設長は、怒り出したら止まらない。いつも誰もがご機嫌を窺っている。この人に関わった為に辞めてしまった貴重な職員が何人もいる。

 休職中も、施設長と顔を合わせる機会は何度かあった。

 前回私がワクチン接種の為職場に行った時も面談の話はあったのだが、施設長は忙しかった。ホーム長が施設長へ内線をかけた時もブチッと電話を切られていた。その日私が事務所に居る間に施設長は2度来て「ホーム長は?」と言い、私に話す事は何も無いかのように、居ないのを知ると出て行った。その時は私も何も報告出来るような事はなかったし、私は彼女にとって話をしたい相手でもないのだろうとしか思えなかった。ホーム長も、何となく雰囲気を感じていたのだと思う。私から施設長へわざわざ連絡しなくていいと言い、復帰後の位置づけについてはフロアで見守りと事務をするという事を再度確認した。

 でも、施設長は私が連絡しなかった事にひどく立腹していた。

 この人、本当に難しい。

 でも、避けられない人だとも身をもって知った。

 結果、3か月休んだ分の残務整理に必要な日数を出すよう求められ、施設の事務についても、手術前にしていた事務と同じとは限らないが、していく事になった。

 施設長室で1時間半冷たい空気の中で過ごした後、帰り際にホーム長が言った。

「あの場では言わんかったけど、今後は施設の事務をしながら施設全体の事もある程度把握できるようになって、ゆくゆくはグループホームのホーム長と管理者を兼ねる仕事をするんだよ」と。

・・・メンタル崩壊するわ・・・

 げんなりしながら帰宅すると、娘から小包が届いていた。マスク、消毒液、ハンドクリーム、菓子類・・・

 図ったようなタイミング。他県で保健師をしている娘はコロナの混乱で残業続き。手書きの手紙が入っていた。

「・・毎日忙しすぎて、本当に体も心もタフで良かったと思ってます。強く産み育ててくれてありがとう・・」って。私も強くならなくちゃ。

 けど、復職を考えるとやっぱり気が重い。