「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

大人の階段

今週のお題「大人になったなと感じるとき」

 去年、息子は成人式当日に二十歳の誕生日を迎えた。

 後から思えば大きな行事をするにはギリギリのタイミングだったのだと思う。

 3月の卒業式は中止となり、卒業証書他諸々が段ボールで送られてきて驚いた。

 4月の入学式は学生と教員だけで行われ、20分で終わっている。

 

 半年経つ頃、息子は隣県へ資格試験を受けに行く機会があった。

 送迎するつもりで私は休みを取っていたのだが、息子は公共交通機関を乗り継ぎ、一人で行った。

「行ってみるよ。もうはたちだから」

 不安な様子は見て取れたが、帰った時には自信につながっただろう。

 

 年が明けて元旦に私はお年玉を手渡した。親戚回りもせず自宅で過ごす正月なので、お年玉も私があげたものだけだった。すると息子は驚いたように言った。

「はたちの男がお年玉貰ってええの?」

 

 息子にとって19歳から20歳はいつもの一年とは違ったようだった。早くに誕生日を迎えた同級生たちが夏にビヤガーデンへ行くのが羨ましかったに違いない。息子にとって二十歳の誕生日は待ちかねた日であり、私にとっては立派な成人式典とイコールの忘れがたい日だった。

 その後たまにこうして出てくる息子の言葉に、大人になろうとしているのが伝わってくる。

 「大人の階段」はあると思う。

 一段一段踏みしめながら登ればいい。

 ゆっくりでいい。

 私のそばで、成長していく姿を見せてくれるのが嬉しい。