「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

介護職としての覚悟

 変形性股関節症の為、現場での介護の仕事を減らし、週末に日直を兼ねて事業所の事務を担う事が決まり、今月から始まった。

 初日、一日同行が付いた。

 午前中、事務所で管理されている諸々の説明を受けた後、今後私が任される職員全員の勤怠管理実務を習う。

 昼休み、隣に座ってご飯を食べながら、尋ねられた。

「どうしたら職員が来てくれると思います?

 どうしたら定着しますかね?」

 職員の募集や採用に携わる彼女の切実な思いだろう。

  

 離職率が高い。

 入職して数日だったり、1か月続かないケースも多い。

 事務を専門にしている彼女は介護の知識も技術も持ち合わせない。

「お年寄りは好きですか? 人と接する事はどうですか?」

 入職の面接に来た人にそう尋ねていると言った。

 先日20日ほどで辞めた職員も、多分高齢者と話す事やお世話をしたいと思って来たと思う。辞めた時、リーダーが言った言葉がある。

「介護ってもっと簡単にできると思ってたんだろうね」

 

「どうしたら・・・」の後、私がどうして介護を志したか、この仕事が続いているのかを問われた。

 

 私は介護を「業務」としてとらえている。 

 きつい、きたない、給料安いの3拍子で離職率が高い。

 でも介護職は専門職。様々な研修や資格試験がある。

 人生終盤の大切な時期をお預かりする責任ある仕事として、病気や薬の知識、現状を改善するための方法や、多職種連携の必要性等を理解した上で、日々快適に過ごせるよう「今日がいい日だった」と思って眠りにつけるよう務めている。

 それにこれからの超高齢化社会に絶対必要な仕事だと思っている。

 毎日同じようで違い、自己研鑽も必要。

 生半可ではない。覚悟をしてこの仕事をしている。

・・・そう答えた。

 

 一方で、認知症の方のお世話は大変だけど、喜びも大きいとも答えた。

「出来なかった事が出来た時とか?」と聞かれたが、

 いや、子供ならそうかもしれないが、高齢者でもそうかもしれないが、認知症に限って言えば、日頃見せない、その時にしか見せない表情や動作、私達介護職の事を思ってしてくれる一瞬の出来事などが、醍醐味ともなる。

 いい顔をした写真が撮れて、家族から「遺影に」と求められる時もある。

 

「なるほど・・・」

 彼女はそう言い、考え込んでしまった。初めて介護を志す人にこの覚悟を求めるわけにもいかないだろう。

 

 給料を増やすのが一番いいと思う!!!

 

 

 翌日から事務は一人仕事となり、分からない事だらけ。

「疑問に思う事はメモに残しておいて」と彼女に言われていたので書いたらA4一枚びっちりになっちゃった。

 事務室には事業所内の70人の職員が入れ替わり立ち代わり顔を見せる。

 顔と名前、勤怠事情を知って、これから私はこの事業所の内部事情により詳しくなっていく。これもまた、私自身の将来にきっと役立つだろう。

 怪我の功名と思っている。