「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

セカンドオピニオン

人生、勉強だ。

  施設に入居している80代のわかさんは、妄想、作話、入浴拒否、独語、思い込みから他人を攻撃する等の症状があり、認知機能の低下が懸念される。5年近く住んでいるのだが、最近いつも利用するトイレから出て自分の部屋に戻れずフロア内で迷子になった。職員も家族も、危機感を持っていたが、打開策を探しあぐねていた。

 少し前に、わかさんの介護のキーパーソンである長男様から、どうしたら風呂に入るようになるだろうかと相談を受けた事がある。施設でも手を焼いており答えられなかった。しかし家族が気にしているという事実を職場の皆に伝え、あの手この手でアプローチした事実やわかさんの言動、状態を細かく記録に残すようにした。その記録が看護師の目に留まった。

 事態を重く見た看護師が、週に一度回診に来る医師に相談したところ、精神科を受診するよう勧められ、初めて精神科をお勧めする家族にはその心情に十分配慮するようにと付け加えられた。

 主治医には定時報告の際にこの勧めがあった事を報告し、回診した医師からも主治医に回診の報告があったと思われる。内科医である主治医からは紹介状を出す準備があると言われた。

 

  いわゆるセカンドオピニオン

 

 施設と本人、家族との間を取り持ち支援計画を作成する事は、介護支援専門員である私の大事な役割である。長男様に電話すると近く来苑予定との事だったので、その日を待って、直接少し時間を貰い話す事が出来た。

 最近のわかさんの日常の様子や気になる行動を伝え、それが認知機能低下の周辺症状として表れているのではないかと思われる事、受診の目的としてはその中核となる症状を治療し、表れている周辺症状の改善を図る事。主治医から紹介状を貰って現在服用している薬を示し、職員が初診当日ご家族、本人と同行してわかさんの様子を新たな医師にお伝えする事も可能であると説明した。

 長男様は黙って聞いておられたが、心の揺れが感じられた。やはり電話でなく会って話して良かったと思った。「行ってみようか」と言われたので、その日の定時報告の際主治医に、長男様に説明した事を報告し紹介状を依頼した。その際「説明を受けた事で、ご家族が受診に行きたいと思うか思わないか。どこの病院で診て欲しいと思うか。あくまでご家族の希望に沿って進めるように」と指示を受けた。

  一連の内容を記録し、わかさんに関わる職員皆でここまでの情報を共有している。

 

 介護の仕事をしながら、夜テキストを開くと瞼が閉じる私を見かねて、娘が携帯アプリを教えてくれた。隙間時間に携帯を開いて勉強し、試験、講習を経て介護支援専門員の資格を得た。その後研修の度に本人はもちろん、家族の気持ちにも寄り添い、同じ方向を向いて改善に取り組む事や、本人、家族との信頼関係は不可欠で、多職種協働の必要性や職場での職員同士の関係性や姿勢も大切だと何度も学んだ。

 学業とは違う学びがあることを知り、人と関わる限りその学びが終わる事が無い事も学んでいる。それは学業以上に困難で、大切な学びであると考えている。

 

 

 

 

 

 

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by ギノ