「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

職員が風邪ひいた

 初めて介護の仕事についたさぼさんは、本人が希望して早番専属パートになって4か月が経過した。教える事を素直に吸収して実践し、真面目で、貴重な戦力となっている。

 そのさぼさんがマスクをし、ひどい咳もしている。聞けば痰に血が混じるとも言う。

「今月3連勤は今日から始まる1回だけで、あとは2日で休みになるのに。きついです」

 フロアのキッチンで朝ごはんの片付けをしながらさぼさんはそう言った。いつも一生懸命で、時間に追われながら、ハアハア言いながら、早番の仕事をほぼ完璧にこなしてくれる。

 

 職場ではメンタリングプログラムが導入されており、さぼさんと私はメンティーとメンターの関係にある。月に一度、業務時間の中で2人で面談するよう決められている。

 出会ってわずか数か月だが、さぼさんは聞けば答えてくれる。

 プライバシーに関わる事も、本人が話してくれる範囲で踏み込んでいる。

「何でも話してね」とこちらから伝えてある。

 

 明日の勤務表を見て、さぼさんが休んでもカバー出来る職員が配置されていると考え、ホーム長に相談してみた。

「さぼさん具合悪いの? 日勤の予定の○○さんに電話してみよう。早番の時間に出勤を了承してもらえたら、さぼさん休めるね」

 そしてホーム長がさぼさんに話しに来た。

ホーム長「具合どうかね?」

さぼさん「いえ、その・・・風邪で・・・」

ホーム長「明日はゆっくり休んで。勤務は代わってもらえる事になったから」

さぼさん「あああ、ありがとうございます」

 

 さぼさん本人から私に話してくれて良かった。話して貰える勤務状況とその時の空気感も大事だ。こちらから気付いてあげられたらもっと良いのだろうが、これまでも言えずに我慢していた事はあったのではないかと思えた。

 

 職員自身が、自分は大切にされていると思ってほしい。

 さぼさんも職務中全力で頑張っているので毎日ぐったりだと言っていた。

 きっと休みも、休んでいるだけに違いない。

 休みが充実し気力を養える事で、より良い仕事ができると私は思っている。

 そして何より、職場全体が一緒に仕事をしたいと思える間柄でありたい。

 コミュニケーションは大切だと言葉では言うが、話せる間柄というのは、お互いの距離感や信頼関係が微妙に関係してくる。

 私の場合、まず気付く事が大切だったと、今回の事から学んだ。